2023-05-20
数学の授業中、黒板が壁と乖離した。
数式を書いていた教授は面食らっていたが、そんなリアクションを取っている暇があったら一目散に逃げるべきだっただろう。吹っ飛んだ勢いそのままに、左右から勢いよく閉じた黒板にぺしゃんこにされたくなかったのならば。
教授の下半身を食い残した黒板は、前席の学生も巻き込んでから床に突き刺さって停止した。
今度は私の上空からバサバサという羽ばたくような音がする。それに引かれるように宙を仰ぐと、てるてる坊主が踊っていた。窓際のカーテンがなくなっている所をみると、それがガワになっているということらしい。頭部には何が詰まっているのだろう? 窓際の男子が首をなくして血柱をあげながら倒れていることと関係があるのだろうか。
ぼーっと俯瞰している場合では全くなかった。私の足元目掛けてアナログ時計が転がってくる。慌ててパンプスを引っ込めたけど、一瞬遅れたら露出した歯車に巻き込まれて轢かれるところだった。
もうこの教室で生きてる人は半分もいまい。
じきに私もこの喧騒に巻き込まれてしまう。先輩のことなんて好きでもなんでもないのだから、先輩のためにここを生き残ろうなんて気概は、あの「嬉」とか書きなぐっているチョークから弾けたかけらほども起きないけれど、この馬鹿騒ぎが先輩の教室でも起こっていないかどうかは気になってしまう。
仕方がない。立ち上がるか。
白粉を撒き散らす黒板消しや、壁を走る椅子たちをなんとか避けながら出入り口の扉にたどり着く。
ドアを開けて廊下に出たときに観た光景を私は生涯忘れないだろう。いや、生涯なんてここで終わりだけど。
ねずみ色の扉をスライドさせ、足を踏み入れた瞬間、廊下は親指大の体長を持った人の足を生やした虫たちの蔵に変様した。ついでに後ろ手のドアは勢いよく締まり出入り口は永遠に消失した。
アトガキ(2024-3-14)
思っていたよりも稚拙だった。状況を二字の熟語で記して次に進もうとする癖があるように思う。もう少し詳細に描いた方が良い。おそらくだけど、無理に淡々とした文章を書こうと頑張った結果だと思う。あと面白くない。